「くちいわ」2022年9月8日に東岩瀬に移転オープン。要注目!全国でも最高峰だと思います。営業は夜のみ・コースのみ。※日本酒ありきのお店なので飲む前提で

料理: 8.5 その他: 8.5 ポイントについて
くちいわ (くちいわ)
TEL
営業時間 夜のみ営業(完全予約制)
定休日 月曜
価格帯 コース11000円 +日本酒(※日本酒と共に楽しむお店です)
訪問回数 2回

2022年9月8日に、富山の朝日町から東岩瀬に移転オープンしたそば店。
店主は口岩倫彦さん。おそばを誰よりも愛していることが、そばへの実直な向き合い方から伝わります。一本気でとことん。褒め言葉として“そばバカ”という言葉を使いたい。本当に真っ直ぐな気持ちでそばを探求され、美味しさとして昇華させていて食べ手の衝撃が大きいのです。
そば屋さんは、そば好きが高じて開業される一点探求型の方が多い印象ですが、同店は全国のそば店の中でも逸材の1人だと思いますよ。シンプルで奥深いがゆえ、難しい印象のそばの世界ですが、別格なモノって(何のジャンルでも)素直に感動があります。世界に自慢できる!
食事としてのそばではなく、日本酒と楽しむそば店で、“ドレスコードは日本酒が飲めること”ということなので、飲む体制でお越しください。ラインナップが素晴らしく、おそばとの相性まで考えて出してくださいます。お酒と共に身を委ねて口岩さんの世界に浸りたい。
 
同店は、「TERIYAKI’s BEST RESTAURANT2023」Silver受賞店です(2023年4月13日発表)。
 

私は金沢から富山まで新幹線、富山駅から東岩瀬までは路面電車で行きました。

  
富山の岩瀬はかつて北前船で栄えた港町で、銘酒“満寿泉”の酒蔵「桝田酒造店」さんがある場所として有名。その桝田酒造店さんがこの岩瀬を盛り上げたいと街づくりをされ、「カーヴ・ユノキ」さんや「御料理ふじ居」さんをはじめとする多数のレストランが集まっており、注目されています。さらにビール醸造所「KOBO Brew Pub」や陶芸家 釋永岳さんの工房もあって、
かなり面白い街です。ここに来ればギュッと凝縮された濃いめの富山が一気に楽しめます。

くちいわさんは以前は朝日町という、富山県と言っても新潟県との県境にあったので、金沢からだとかなりアクセス困難でした。(私もお店まで行ったことがあったのですが、予約制と知らずに食べられずに敗退しました。)

2009年4月27日、富山県朝日町にて「手打ちそば くちいわ」を開店。2017年10月11日、同町泊駅駅前にて「酒蕎楽くちいわ」を移転オープン、2022年5月21日まで営業。この度2022年9月8日、東岩瀬に移転。
岩瀬に来ることで、口岩さんの素晴らしさを知るチャンスが近くになった気がします。
が、実は既に予約困難に(汗)。このSNS時代、良いお店は予約が取れなくなるスピードが本当に早くて困ります。

店内は空間に余裕がある造り。必ず驚くのは、入ってすぐに設置された大木のテーブル。アラスカのスプルスというマツ科の木で、荒々しく美しく、これは圧巻!


カウンターも凛としていて素敵で、何と言っても厨房が一望できるのが最高なのです。

大きな茹で釜でそばを茹でるところも眺められます。また、氷の器を作って井戸水でそばを締めるシステムも画期的。
そばは、フレッシュなそばの実を真空保存したものを店で引き立てで打ちますが、その挽き方や太さまで、細部まで徹底してこだわり抜いていて精度が高い。探究心と経験に裏打ちされた美味しさ。


2022年11月17日 ディナー

今回は予約を入れての初訪問。11月12月と言えば北陸はカニ祭りですが、ここはここの“らしさ”を貫いて魅力を最大限に発揮しているのが良いです。どことも違うスタイルを確立されています。
料理は、会席にそばを取り入れるスタイルではなく、主体はあくまでそばで、そばを軸として組み立てたコースというのもオリジナリティがあって良いです。

この日のお酒全です。


●そば
一品目はそば。舌も胃袋も記憶も真っ新な状態で、まず最初に腕の見せ所であるおそばからというプレゼンテーションが最高です。
今回は10月下旬に収穫したそばで、うっすら緑色がかっています。そばで季節の味わいの変化が楽しめるというのもここならでは。

口に入れる直前に、そばの香りがスッと鼻腔に舞い込んできて一瞬ハッとする。食感、喉越し、風味、味わいがパーフェクトで、余韻まで美味。
何も付けずにそのままで全部胃に収めてしまいそうでしたが、お塩を付けるとまた素晴らしくて2度目の驚き。塩は厳選したスペインのアニャーナの塩で、こちらがそばに相性抜群です。角が立っていないしエッジも効きすぎておらず、そばに寄り添い優しく輪郭を出すのに一役買っています。
つゆもつけたいが塩で箸が進む。しかしながら、つゆを付けるとこれもうまいという罠。
日本料理の出汁の引き方とは違い、鰹はしっかり煮出しているそうで、それがかえしとそばに合うんですね。

●そば屋のおつまみ
秋茄子の出汁びたし、茹落花生、低温調理 鴨ロース、焼き味噌、醤油豆、おから、蒲鉾(鈴廣)
“大人のハッピーセット”と出してくれたおつまみセットは、心躍る酒肴。

落花生は、富山入善朝日で掘りたての生落花生を農家さんから直接買っているそうです。ぷっくり膨れた実がパンパンに詰まっており、味わい深い。
焼き味噌は、ネギ・大葉・柚子・そばの実を白味噌などブレンド味噌に混ぜ込んで、しゃもじに塗りつけて焼き目をつけて。発酵食のコクと甘さに薬味とそばの実の野趣が後を引き、その余韻でまた酒が進んでしまうという罪な一品。
醤油豆もハマった。通常大豆は一晩水から戻して柔らかく炊き上げますが、こちらは炒ってから甘じょっぱく炊いてあるので、シャキシャキとした食感とキレのあるお醤油の味の添え方も美味。

●だし巻きたまご
これぞそば屋のだし巻きと言えるかえしの効かせ方で、たまごのコクにしっかりとかえしの味が乗っていて、コースとしての繋がりもあります。目の前で巻き立ての、ふるふるの熱々。最高です。

●馬刺し 福島、にんにく味噌

●そば
最初のおそばと同じものですが、切り幅を変えることで味わいの違いを感じさせるプレゼンテーション。
細打ちのおそばの茹で時間は25秒ほどですが、こちの板状そばは1分半で、ややしっかりめの噛みごたえ。よく噛むことで、香りも甘味も引き出されてより強く感じられます。

●鰤 魚津、辛み大根
この日魚津で1万トン揚ったという鰤。レア感をほんのり残した火入れも良かった。腹の美味しい部分は脂が乗っていますが、口岩さんのお母さまが育てる辛味大根がさっぱり脂っ気を切ってくれました。

●そばがき
スペシャリテと言える一品。まずは目の前で穀物専用のグラインダーでそばの実を挽くところから見せてくれます。

さらに目の前で、鍋で練り上げてくれます。
火を入れると徐々に粘度を増していき、自然薯のような粘りを帯びてくる。出来立ての湯気の上がるそばがきはもうビジュアルからたまらん。

プチっとした粗びきの食感と、粘り気の2つを口の中で感じながら。この妙味が素晴らしい。

●そばがき 揚、ゲランドの塩
今ほどのそばがきを、お次は揚げて出してくれました。これはまた味わいが異なって違う景色。
揚げることで表面に輪郭が出てザクザク香ばしく、中はふわふわというこの対比が美味。熱々の温度と共に滋味もほんのり立ち上る。

●牛肉しゃぶしゃぶ
次の温かいおそばのつゆのために、牛肉をしゃぶしゃぶにてその脂を使うというなるほどの一品。粗挽きの胡椒とお塩で。


●穴子 天ぷら

●舞茸そば
山で育てている舞茸の香り高い風味と、先ほどしゃぶしゃぶした牛の脂が溶け合ってほんのりと厚みが出たつゆで。
温かいそばの欠点と言えるのが、つゆの中でどんどん柔らかくなってしまうことですが、これを逆手に取って、太めの十割そばを使用することでプラスに。繋ぎが九割よりも強固ではないため長さは短めですが、時間の経過とともにつゆを吸っていく。
そばがうまいがつゆもうまい。結局つゆは飲み干しました。胃から体に染み渡って細胞が喜んでいる。

●ミルクプリン
ミルク感たっぷりの雪のように真っ白なプリンにとろっとかかるのは、そばの花から採取した蜂蜜と、炒ってカリカリばしいそばの実。最後までそば屋さんとしてのプライドを感じるコースの組み立て。
合わせたのは満寿泉の貴醸酒で、同調パーフェクトなペアリングでした。

2022年10月2日 お祝い訪問にてまかないとして

この日は春から育てた夏そばでした。うっすらと緑色をしています。
・おそば

・そばがき


・温かいおそば 天然舞茸