2022年6月18日・19日に、七尾のイノベーティブイタリアン「Villa della pace(ヴィラデラパーチェ)」平田明珠シェフと、宮古島「État d’esprit(エタデスプリ)」渡真利泰洋シェフとのコラボレーションイベントが、ヴィラデラパーチェにて行われました(両日昼夜開催)。
私は、19日の夜の回を貸切にしてもらって、北陸のトップシェフらと訪れました。
(コース22,000円、アルコールペアリング15,000円・ノンアルコールペアリング10,000円)
渡真利シェフ率いる宮古島「État d’esprit」は、“100年後に繋がる料理”をテーマに掲げ、“琉球ガストロノミー”に取り組むイノベーティブレストランです。宮古島から橋で繋がる伊良部島の「紺碧ザ・ヴィラオールスイート」内にありましたが、現在は移転準備中です。訪問した時の印象は、とにかくプレゼンテーション力が高いなと思いました。宮古島の食材特性や味と共に食べ手に伝わるメッセージ性が強かった。
「Villa della pace」は、能登半島の内海に位置しているため、海はまるで湖かと思うほど穏やかです。以前は塩津海水浴場として利用されていた場所で、レストランからは海辺の景色を楽しむことができます。
「villa della pace(ヴィラ・デラ・パーチェ)」2020年11月17日七尾中島の海辺にオーベルジュとして移転オープン!素晴らしいロケーション
宮古島の海とはまた違った能登の海を背景に繰り広げられる2シェフの料理。個人的に注目していたのは、異なる文化がお皿の上でどう融合するのか。お互いが大切にしている土地への愛や誇りをどのように調和させるのかでした。
今回のコースは全料理が合作とという挑戦的なコースで、主に宮古島・沖縄の郷土料理の骨格に、能登食材をフュージョンさせてある印象でした。とても素晴らしかったと思います。
インパクトあったのは琉球ハシブトカラス。印象的な美味しさは、イラブチャーと山羊そばです。
レストランに到着し、まずは海辺でオリオンビールとアミューズを頂きました。この抜けの良い景色、穏やかな潮風と山々の緑を全身で感じながら飲むオリオンビールは最高です。
●ハーブのブーケ
ソテツで編んだお皿に、野菜とハーブの可愛らしいブーケ。トーフヨーとサワークリーム、能登の赤西貝を巻いてあって、アミューズから沖縄と能登を感じます。気分にスイッチを入れてくれるプロローグ。
ここからはレストランに移動してコース開始です。この時期は18:30でもまだこんなに明るい。穏やかな海の景色がダイニングから良く見えて、時間と共に刻々と風景が変わって行きます。
●マンゴー 山椒
宮古島マンゴー、ストラッチャテッラ、山椒、マタタビの酢漬け、ヘーゼルナッツ
マンゴー果肉が口の中で液体に変わった瞬間、南国の元気のある甘さに、酸味や香ばしさといったさまざまな味わいが次々に現れます。
●鰆 トマト パッションフルーツ
能登町“日の出大敷”の8キロ鰆を藁焼きで。
輪島のトマトの乳酸発酵とパッションフルーツで鬼灯のようなニュアンス。島ラッキョウをアクセントに。
●鲍 月桃
月桃(げっとう)の葉でこねた餅粉を包んだ“ムーチー”は沖縄の伝統料理の一つ。
今回は餅米と能登の鮑、能登の海藻を月桃で包んで蒸しあげてあります。ほこほこと湯気に乗って鼻腔をくすぐる、むせかえるような月桃の独特な香り。北陸では出会わないニッキのようで爽やかな風味に、海の香りがフュージョン。
●ラヴィオリ 琉球ハシブトカラス
初めて食べるカラスにドキドキ。カラスと言っても、木の実だけを食べているカラスなので、ジビエの感覚でした。
竹炭の真っ黒なラヴィオリにはカラスのもも肉、天然キノコの塩漬け。ソースはカラスの骨出汁で、天然みつば新芽を添えて。
胸肉は醤油の糠床に漬け、枝に刺して焼き上げます。
割としっかりした筋肉質で食感があり、咀嚼するごとに旨味が出てきて、どことなく雷鳥っぽい苦味もあり野趣を感じました。
●畑 チャンプルー
“混ぜ合わせる”の意味の沖縄のチャンプルー。エタデスプリで出てくるエタデスプリ風のチャンプルーが、ヴィラデラパーチェのシグネチャーである“畑”とコラボ。鰹酒盗と豆乳の温かいソースの、まろやかでコク深い旨味で頂きます。
●イラブチャー 茗荷竹
北陸では見かけない鮮やかなブルーのお魚。こういうお魚は見た目で「うまくないだろ」という先入観持ってしまいますが、
大味かと思いきや身質が繊細で水分量が保たれていて、皮目のゼラチンも焼き切ってあり美味でした。色にびっくですが、味わいにギャップあります。宮古島ゼンマイのソース、茗荷と。
●ミヌダル 黒造り
宮廷料理の一つ。豚肉に黒ごまを塗った料理で、真っ黒な黒胡麻のタレで覆われている見た目が“ミヌ”蓑(みの)を連想させることが由来。ミヌダルを現代風に再現した料理はエタデスプリで出されておりました。
今回は氷見で放牧豚を育てる「ぶーぶーファーム」さんの肩ロースを使用し、能登の伝統発酵食であるイカの塩辛にイカ墨を混ぜた「黒作り」を塗って仕上げます。なるほど、発酵のまろやかで自然な甘さと深いコク、塩気が相性抜群。能登バージョンののミヌダルです。シークワサー胡椒を添えて。
●山羊そば
沖縄の山羊そばは正直苦手で、はじめは警戒して食べていましたが、とっても美味しくて(私も皆さんも)おかわりしました。
スープは、山羊の骨から取った出汁にアゴ出汁を合わせてあり、ネガティブな臭みがなく、上手に海の旨味が乗っていました。
平田シェフが打ったカキドオシを練り込んだ麺も、テロテロとした舌触りとむっちりした食感、風味も良くて美味でした。
一番印象に残った料理。
●泡盛 焼き茄子
泡盛をひたひたに含ませたババと、焼き茄子のソルベで大人な夏の味。
●小菓子、ちんすこう
ノンアルコールのペアリングとても考えられていて、沖縄と能登の融合をなるほどなるほど!と感じ取りながら楽しめたポップアップでした。
平田シェフ、渡真利シェフに拍手!