春の【片折】2025「桃の節句」

予約超困難店、金沢が世界に誇る日本料理店「片折」さんの春のお献立です。(ちょうど30回目の訪問)

桜の開花を待ちわびる金沢の春。
片折さんのお料理が訪れるたびに変化があって、毎回楽しみ。豪華絢爛な高級食材を前面に押し出すのではなく、地の食材や大衆魚、旬の野菜を巧みに取り入れ、そこに研ぎ澄まされた技と感性を乗せてくる。その技量の高さと面白さが食通たちを魅了してやまない理由。
今回は「桃の節句」がテーマ。お軸にはお雛様が描かれ、しつらいにも金沢らしい雅やかさが漂います。金沢では旧暦の4月3日まで雛飾りをする風習があります。

今回特に印象的なのは、鰯のお椀、カジメご飯、フキふくさでした。

・山独活の天ぷら、スミイカ木の芽和え、小鯛卯の花和え
春の芽吹きを感じさせる前菜。独活は爽やかな香りとほろ苦さが口に広がる春の恵み。スミイカは、柔らかく甘みのあるスミイカを木の芽の風味が持ち上げる。しっとりとした卯の花に小鯛の上品な旨み。

・ヤナギバチメとわかめ
春を告げるヤナギバチメのお椀。削りたての鰹節と昆布効かせた吸地に若芽が調和。

・お造り
ヒラメ、アカイカこのわたあえ

・和風カニ焼売
修行先であった「懐石料理つる幸」から引き継いだ名物メニュー。これが出てくるとしみじみありがたい気持ちになります。

・メダイの幽庵焼き、利休仕立て

・手毬寿司三種 ひな祭り
海鱒、ちらし寿司、白身昆布締め

・加賀れんこん蓮蒸し
鋳込んだ甘鯛にも調和する、繊細なれんこん蓮蒸し。ほんのりと感じる滋味と秘めた地力に、春風が吹く。

・岩ダコ梅肉和え、酢橘ゼリー
透明感のある美しい一品。タコの優しい弾力に梅肉の酸味が心地よいアクセントとなり、酢橘のゼリーが全体を爽やかにまとめる。

・釜揚げホタルイカ
活ホタルイカの目と口を取り、シンプルに釜揚げで。噛むほどに春の味が広がる。

・鰯のお椀
脂の乗った鰯を品良く澄んだ味わいに仕上げた一椀。鰯の持つ力強さをこんなにも上品で調和のとれた味わいに仕上げてあるのが素晴らしい。

・カジメご飯
まさかのカジメご飯にテンション上がりました。カジメは海藻の一種で、能登では日常的に食べるので私には幼い頃から馴染みのある食材。(県外の方は初めてだったようです。)
土鍋の蓋を外すと、湯気とともに鼻腔をくすぐるこの磯の香りが漂う。たまらない。

おかわりして、かじめのお茶漬けもして結局4杯。

・ふくさ
最後に供されたふくさがまた秀逸。鶯色の皮の中には、白あんにふき味噌を合わせた品のある餡。白あんのまろやかな甘さに、春のほろ苦さが調和し、季節の移ろいを感じさせる余韻を残してくれました。

 

店名:片折
住所: 石川県金沢市並木町3-36
※基本的に紹介制