2024年1月に、金沢市白菊町に移転オープンした“伝助”は、グレードアップして生まれ変わっておりました。店名は「釣亭伝助」から「緑酒伝助(りょくしゅでんすけ)」へ。“緑酒”というのは、いい酒、特級酒という意味があるそうですよ。
とにかく前店と建物のギャップが大き過ぎて、常連さんの方がびっくりするはずです(笑)。
店主である濱﨑興樹さんは経歴がユニーク。
1994年、石川県能登町に生まれ、高校卒業後の2013年に海上自衛隊に入隊し艦艇に配属され料理人(司厨士)として5年間勤務。その後2018年に退職し、レストランでの勤務を経て、2020年4月1日に初の自店「釣亭伝助」を開業しました。ビル地下の昭和な雰囲気が漂うスナックが並ぶ飲食フロアにあり、銘酒の豊富なラインナップと実家である奥能登から直送される鮮魚料理が提供されるというギャップ感もあり、その隠れ家感が注目を集めました。
2024年1月からの新たな舞台は、金沢市白菊町。金沢三大茶屋街の一つであるにし茶屋街からほど近くにある、古民家を巧みにリノベーションした一軒家レストランです。お店に一歩足を踏み入れると、ダイニングへ続く趣あるアプローチが迎えてくれて、カウンターの奥には手入れが行き届いた美しいお庭が見えます。
調度品にもこだわりが感じられ、趣のあるシックな雰囲気で、前店の常連であった人々にも新鮮な驚き与えます。店内には直線に10席のカウンターがあり、そこからは入手困難な名酒を収めた冷蔵ケースが見え、京都の稲荷山の土で作られたおくどさんが存在感を放っています。金沢駅の鼓門をイメージしたそうです。
濱﨑さんのご実家は能登町で、お父様が漁業権を持っているほど幼い頃から魚とは密接であるため、目利きと調理に優れており、その美味しい魚料理は美酒と最高のパートナーになってくれます。
料理のお献立も以前よりもしっかりと組んであり、最後まで飽きさせない、次の一品が楽しみになるコース構成でした。(アラカルトもあり)
また、以前からファンの多い「海軍カレー」は引き続き提供します。
海上自衛隊イージス艦で腕を振るっていた頃に実際に作っていたカレーの再現で、普段は食べないタイプのカレーで、後ひく美味しさのカレーです。見た目はどっしりしているのですが、自衛隊さんが活動しやすいようにもたれないように作ってあるそうです。焦がしたスパイスの香ばしさとビターな味わいが後を引き、あっという間に完食します。ぜひ食べてみてくださいね。
(今回のお酒とお料理)
この十四代のラインナップの取り揃えは、なかなかできるものではありません。濱崎氏の強い情熱があってこそ!
十四代 龍泉とAKABU海流神水の“龍対龍”の飲み比べ、能登町 谷泉「登雷」 通称“赤トラ”は母の緑さんが仕込んだ酒でかなりレア。
乾杯に頂いたのは、なんと「No.6」で知られる新政酒造と漫画『宇宙兄弟』のコラボ酒です。
これは入手困難で、1本しか入れられなかったものなのだとか。
●大根酢の物、鱈の子和え
能登らしい、素朴でホッとする先付け。
●蛸の旨煮
●能登 活クエ
能登町の網元「日の出大敷」中田洋助氏の魚は、トップシェフが大きな信頼を置きます。
能登半島地震の影響で、しばらく食べられないと思っていただけに、思ってもいない喜びでした。
出航できる船で漁を再開しております。
3日間熟成をし、コンディションが最高で、甘さもマックス値で食感ももちもち。能登のサクラ醤油が美味しさを引き立てます。
●穴子煮凝り
●白海老 富山、雲丹 北海道、有明海苔
風味の良い有明海苔に乗せてパクッと。お酒が進んでしまう罪な美味しさ。
●藤九郎ぎんなん
大粒の3Lサイズで、どっしりした重みがあり奥深さも違います。
●蛤 お椀
●海老芋から揚げ、カラスミ
ホッコホコの海老芋に、削ったカラスミの鮮やかさが映えています。塩気と奥行きのある旨み、海老芋の甘さが調和し広がる。
●能登牛ヒレ肉デミグラスソース
お献立にメリハリをつけているのが素晴らしい。そしてしつこくなく、日本人の味覚に合わせるように隠し味にお味噌を少し入れてあるのもミソ。
●白甘鯛、骨スープ
京都の稲荷山の土で作られたおくどさんの横では炭火焼きができて、焼き物を仕上げる濱崎氏もいい雰囲気です。
白甘鯛とその骨スープ。以前の居酒屋スタイルとは異なり、こういうしっかりキメてくる料理も増えているところに進化と気合を感じました。
●お食事 能登牛プレミアムシャトーブリアン
これは本当に素晴らしく、大きく印象に残った一品です。
能登牛は元々生産頭数が他のブランド牛より少ないですが、能登半島地震の影響で牛舎が壊れたりと被害が大きかった。これからの飼育も心配されますので、希少ですし、能登牛という食材を知ってほしいという思いを込めて提供しております。
食べるタイミングを逆算し、5時間前から低温調理開始。
歯が喜ぶ食感で、竈で土鍋で炊き上げたご飯と一緒にしても食感が調和しておりました。この柔らかさは天国。
●さくらももいちごの大福
一粒とっても大きいブランドいちごで、贅沢にアイスと求肥皮に包みます。大人の雪見だいふくですね。
コース最後までこだわりが詰まっていました。
「緑酒伝助」は、伝統を守りつつも新たな風を吹き込む金沢にマッチしたお店で、全国銘酒と能登食材への深い愛情、さらにこだわりの空間で、金沢を代表する名物店としてこれから人気を博していくことでしょう。
一度訪れたらきっと常連になるはず。これは人気になる予感しかしないぞ。
私も次の予約を入れて、お店を後にしました。
日本酒好きにぜひ訪れてほしい一店。
【店舗詳細】
店名:緑酒伝助(りょくしゅでんすけ)
住所:石川県金沢市白菊町8-17
席数:カウンター10席、個室1室(4〜8名)
営業時間:18:00〜22:30
定休日:毎週水曜・月一回火曜定休
支払い方法:現金・カード決済・PayPay・楽天ペイ