「和魂漢才」を掲げる中国料理レストラン。2017年にオープンし、「ミシュランガイド東京2021」(2020年12月10日発売)では、中国料理として3ツ星を獲得しました。「プロフェッショナル 仕事の流儀」(2020年11月放送)に取り上げられたことも記憶に新しいですね。
川田智也シェフの料理は、単なる足し算や掛け算にとどまらず、日本料理の“引きの奥深さ”や、極限まで研ぎ澄ました繊細さを兼ね備えています。磨かれた技術とセンスが生み出す、記憶に残る美味しさ。確固たる味わいのスペシャリテ、堂々たる迫力と豪華さを持つ料理、素朴ながら哲学が詰まった一品、そして初めて味わう驚きの美味しさ――。それらが緻密に組み立てられ、ドラマティックなコースを作り上げています。抑揚のある流れに引き込まれ、最後まで夢中になる展開です。
料理の献立は、四字熟語のように漢字4文字で表現されるのも特徴のひとつ。
・岩茶奇蘭
・紹興扇貝
・明蝦春捲
・蜜汁叉焼
・草苺肉圓
・香檸海蜇
・雉雲吞湯
・清蒸虎福
・香辣鸡翅
・紅焼魚翅
・今日時菜
・黒椒鹿肉
(料理の一部紹介、写真は下記に)
今回のスペシャル食材はホタテとトラフグ。
最初の一品は、お茶を使った素麺から。奇蘭は武夷岩茶の一種で、花のような香りが特徴の烏龍茶。その繊細で凛とした味わいが、食のプロローグとして食べ手のスイッチを入れてくれます。
立派なホタテは紹興酒をまとい、あえてホタテの甘さを前面に出さず、サクサクとした食感を活かした仕上がり。これまで知らなかったホタテの味わいに出会いました。
海老の春巻きは、極薄のパリッとした皮に包まれ、中にはぎゅっと凝縮された海老の旨み。ひと口ごとに満足感が広がります。
卓上に七輪とともに登場する自家製チャーシューは、炭火の香ばしさと、優しい弾力が楽しめる逸品。歯が喜ぶような食感とうまみが共存しています。
驚きの一皿は、イチゴを豚バラで巻いて揚げた酢豚。ひと口で頬張ると、甘酸っぱさと肉のコクが一体となり、酢豚の新たな魅力を感じます。
雲白肉(ウンパイロウ)は、店の名物ともいえる大皿料理。四川の伝統的な薄切り豚バラ肉の料理に、茄子を組み合わせた川田シェフのオリジナルアレンジ。豚の旨みをしなやかに受け止める茄子との相性が抜群です。
4キロものトラフグは、魚醤のソースで。肉のような弾力を持つ身を噛みしめるたびに、魚醤の旨みがじわりと広がります。
真っ赤な唐辛子に埋もれた手羽先は、見た目にインパクトがありながら、単に辛いのではなく、スパイスのアロマが心地よく香る一品。
大根餅はシンプルながらも素材の味を最大限に引き出し、みずみずしく、口の中で優しい甘さが広がる仕上がり。
フカヒレもメインの鹿肉も、言うまでもなく完璧。これ以上ない美味しさで、コースのメインにふさわしい料理でした。
料理もサービスも完成されているのにも関わらず、常にブラッシュアップさせ、想像を超える新しい体験を毎回もたらしてくれるところにも大きな驚きと感動があります。頂点に君臨する名店。
茶禅華
東京都港区南麻布4-7-5
03-5449-6778